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 ビハインド・ザ・カンバス 2002年6月14日

 カンバスの後ろ側: マット・ウィルソン


 真のインダストリー・インサイダー
 byトビー・ヴァクター

 彼がポリスに自分はマジックのカードを描いていると言った時、ポリスは「行ってよし」と言ったという。

 ほとんどのマジックのアーティストにとって、ゲームのための絵を作る過程はしばしば第三者的見地から行われる。課題は記述で入って来て、それに自分自身のセンスを加えて噛み砕き、レントンに作品を送り出すのがアーティストの仕事だ。レントンとは君達が遊んでいるカードが最終的に造りだされるところだ。

 しかしながら、アーティストはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社での製造工程において、絵として描かれる人物やクリーチャーへユニークな見地を提供することを手伝うといったアクティブな役割を持つ場合もある。そういうアーティストの一例がマット・ウィルソン氏だ。アート・ディレクターでありコンセプト・イラストレーターの両方であるマット氏は、ゲームのビジュアル面のさまざまな見地で関係している。アーティストとして、彼は《黎明をもたらす者レイヤ/Reya Dawnbringer(IN)》や《クリスの魔道士/Kris Mage(MM)》など多くの記憶に残る作品を創り出した。

 大部分のアーティストと同じように、マット氏はとても若い頃から創作を始めた。最初のスター・ウォーズの映画(ニュー・ホープ)が1977年に発表されたとき、それは彼のイマジネーションを夢中にさせ、さまざまな意味でインスピレーションを提供したのだ。

「この(絵の)フィールドではみんなと同じように、まだちっちゃな子犬のときから絵を描いてたよ。初めて描いたのは10歳のとき、ほとんどのものがスター・ウォーズの戦闘シーンで、他にはときおりキャッスル・シージも描いてた。あの頃の絵は、マルチメディアの経験の一種でもあって、僕は無意識に描き散らかしてる絵に音響効果をフルトラックで入れ込んだりしたんだ−−−このクセは教室で発表するときに嫌がるやつもいたけどね」


 結局のところ、このスター・ウォーズへの執着が、マット氏に異なった経歴の道を示唆していたのだろう。しかし彼の能力は自身の努力にも反映した。

「14歳になるまでは、宇宙飛行士になりたかったんだ。X-ウィングを飛ばしたかっただけなんだけどね。でも、スペース・キャンプにも行ったし、バカみたいに宇宙の資料を調べたりしてたんだ。高校に入るまでね。でも高校で、興味もなかった多くの仕事があることを悟ったんだ。数学がそんなにいらない言論や絵画みたいな。僕は、今になるまでアートワークで生活できるなんて思ってもいなかったけど、ライトが点いたとき、僕は人生でイラストレーションの方面を追求しなければならないとわかったんだ」

 多くのアーティストとは違って、マット氏はほとんどが独学で、技術を美術学校から得てはいない。

「僕は一年半ほど公立大学にいたんだ。そこは本当の意味で僕を助けてくれないということを実感させてくれたよ。僕には本当の美術学校に通う余裕がなくて、カリフォルニア(Cal State?)州立大学は、美術の授業より一般教養のほうに多く張り付かさせられるもんだから、僕は自主休校して授業料を絵画の本につぎ込んで、鉛筆で黒くなった指紋でページが真っ黒になるまで勉強したんだ。たいていは解剖学のやつだったけど、学校でしてきた勉強よりも長い時間を独学に費やしたんだ」

 彼は、創造的な自由さを提供するファンタジー・アートに引き込まれていった。

「僕は非現実的なのが好きでさ。当たり前に聞こえるけど、それが帰着するところは現実なんだ。僕にとって絵を描くこととは、頭の中で跳ねまくってるもの…僕のイマジネーションを現実にする方法なんだ。創造性を必要としないビールのポスターや保険の広告なんかを描くくらいだったら、錆びたチーズおろし器に頭を突っ込んだほうがマシだよ。僕はそんな自己主張だけが全てだとか他のそういった'芸術品まがい'の価値観とかじゃなく、僕のアートワークが創造的である必要があるんだ。で、ファンタジーってのはそれができる一番のものなんだ」


 ファンタジーゲームの定義する典型的な"ドラゴンと魔術師"からしばしば大きく外れるために、彼はマジックの絵を描くのが特に好きだという。

「マジックは新しいデザインの実験と検証ができる空き部屋がたくさんある。'伝統的なファンタジー'としてレッテルを貼られることから意図的に抜け出そうとしているからね。君らは、他の製品が設定するより一般的かもしれない同じ中世のシーンの一種の代わりに、たくさんの新しい領域を見ることができるのさ」

 マット氏のマジック・アートへの導入は他の人たちとはちょっと違ったものだった。彼はゲームのアート・ディレクターとして実際に雇われたが、フリーランスの人間がそうするように作品を提供したりもした。アートディレクターであることは、マット氏が課題を完璧に理解できる利点であった。

「僕の最初のイラストはオーバーサイズのヴァンガード・カードのうちの一枚だったけど、初めて実際のカードセットで仕事をしたのはテンペストなんだ。僕が仕事をどうやって得たかというのはおかしな話で−−−実際にマジックのアートを監修するために雇われて、その仕事をしてた。そしたらセットへのアートワークを寄稿する許可が下りて期待までされちゃったのさ。だから日中はカードセットのための監修をフルタイムでやって、夜中は僕自身のためにフリーランスの仕事をフルタイムですることになったんだ。アートディレクターとのコミュニケーションは簡単だったよ」


 不幸にも、アート監修作業をマットはどこかで楽しめなかった。彼はもっと絵を描きたがっており、もっと自由にやりたいと思っている。だから彼はFASA株式会社でスタッフ・イラストレーターとなる申し出を受けたのだ。その会社が悪くなり始めたところに、マット氏にウィザーズ社で働く別の機会を与えられた−−−今度は、主任コンセプト・イラストレーターとして。

 彼の現在の仕事の一部として、マット氏は、マジックのカードにえがかれる世界に住むたくさんのクリーチャーや人物をデザインし、絵に起こしている。これは非常に重要なことである。それはつまり他のアーティストへのスタイル・ガイドを作ることにもなるからである。その全員がカマールや、《陰謀団の先手ブレイズ/Braids, Cabal Minion(OD)》や、《陰謀団の総帥/Cabal Patriarch(OD)》自身を、姿かたちを変えないような助けになる確かなガイドラインのひとセットによって描くことができるからだ。この仕事はマット氏にとって最も満足いくものだ。

 アート・ディレクターの仕事はアーティストマネジメントも含んでいて、彼が楽しむこともなく「昔よりかけ離れていて、またやれっていうのはカンベン」と言っていたものだ。それとは対照的に、彼の現在のコンセプト・イラストレーターとしての地位は、彼の創造的な才能をいかんなく発揮できる。

「基本的に、アート・ディレクターってのはセットに絵を描いてくれるアーティストを選ぶものだ。その人はアート解説を任せて、それからプロジェクトが求めるところの最終的なイラストを保証するよう絵を描く行程を導くものだ。あたかも映画監督と俳優との関係のようにね。

コンセプト・イラストレーターとして、僕は請け負う人の管理もしない、委任もしない、共同作業もしない。僕は自分のデスクでコンピューターの前に座って、プロジェクトをコントロールするチームによって明らかにされた必要条件を満たすために試行錯誤しながら一日中モンスターや人物を描いてる。大規模なアート監修の経験があって(マジックの前にレジェンド・オブ・ザ・ファイブリングズのアート監修を2年間やってた)、製造工程の両方の側で役に立つ仕事の知識を持っているんだ」


 それでは、マーク・ローズウォーター氏のようなデザイナーの頭の中から出たアイデアは、どのようにマット・ウィルソン氏のカンバスに現れるのだろうか?

「昔は、その行程は研究開発部門がカードの機能を考えて、その機能に合ったクリーチャーのラフアイデアを描いていたんだ。でも今は、機能の解説とアイデアが、クリーチャーの視覚的アイデアを提出するコンセプト・アーティストに渡される。それらはそのあとでR&Dによってそれが必要条件を満たしているかどうか決めるために評価され、そのように、しかるべき修正をされるんだ」

 マットの仕事によって出される最も大きな問題のひとつは、創造性と実行可能性との間のバランスを見出すことだ。

「最も大きな挑戦は、クールに見えるように、でもR&Dがそのクリーチャーにあてた機能やコンセプトの必要条件に沿うようになんとかしようと考えることなんだ。解説は外見のビジュアル面を書いていないから、聞こえはいいけど見栄えまで同じように合わせることができないこともあるんだ」

 いまのところ、完成した製品はマット氏を満足させるものもあるようだ。

「僕はカマールはうまくイケてるようにできたと思ってる。あと《精神を刻むもの/Mindslicer(OD)》のデザインも気に入ってる。あと最近、かなりいい感じの天使をデザインしたんだ。でもまだしばらく後にならないと彼女には会えないよ。ここ数年はマジックのクリーチャーを一新するために働いているんだけど、マジックの先の版にならないとそれらのデザインにはお目にかかれないだろうね」



 マット氏のガイドラインはアーティスト達に作品を作るための境界線を与えているが、彼はそれがアーティスト諸氏の創造的なプロセスにとって有害であるとは思っていない。

「僕が初めて働いたセットはテンペストなんだけど、スタイルガイドを使ってやっていたよ。その時から、マジックはセットにいつも緻密なスタイルガイドを使っているんだ。それはどんな風かって言うと、あー、あらかじめ人物と設定があるもうひとつの小道具がある感じかな。スター・ウォーズの絵を描くようなもんだよ−−−スター・ウォーズに出てくるもののように描かなきゃいけないし、他の資料と似通っちゃいけない。

皆はスタイルガイドのことをアーティストの創造性を窒息させるもんだと嫌っているようだけど、これはアーティストの命そのものでもあるんだ。コイツは雇われ殺し屋で、スタイルガイドはそのルーチンの一部なんだ」


 マット氏は自分のお気に入りである自分のマジックの作品をひとつ出すときが難しいのだが、彼が本当に好きなものの一つは、皆も大好きなあの殺人ウサギだ。

「《ケザードリックス/Kezzerdrix(TE)》はお気に入りのひとつだよ。なんでかって言うとこれは全部が全部僕だからさ。こいつについてのアート解説は基本的には '大きな、肉食の黒のクリーチャー' だった。僕はこれについて、ちょっとおかしくハメをはずして、サイコキラーラビットを作り上げた−−−それまでのありとあらゆるジョークが生まれたやつだ。このアートワークは多くの人たちの心の琴線にも触れたし、数年前マジックを宣伝する初めてのテレビコマーシャルの一つの案として使われたんだ。そしてそれを見れば凄く楽しめるものだったんだ」

 ゲームをすることが関係している限りにおいては、マット氏は本当に古株である。が、もうプレイはしていない。

「僕より前にマジックをやってたって言える人は少ないね。マジックが初めて発売されたとき、南カリフォルニアのゲームショップで働いてた二人の人間と同室だったんだぜ。ウィザーズ社はゲームを根付かせることのできるたぐいの店舗ごとに2つのスターター・デッキを送っていたんだ。二つのデッキだけだったから棚に飾れないし遊ぶのも売るのも無理があったけどね。

だから僕のルームメイトはデッキを持ち帰ってきて、僕とカードを分けて遊び始めたんだ。すぐにハマッたね。それから2年くらいは毎晩のように遊びまくってたと思う。その後僕は工場で働きはじめて、プレイする時間も減っていった。でも僕はマジックの最初のカジュアル・プレイヤーの一人だと胸を張って言えるよ……ホントにしゃぶり尽くしたって」




 《黎明をもたらす者レイヤ/Reya Dawnbringer(IN)》
 アート解説(インベイジョンの《眩しい光/Blinding Light(IN)》より):「超新星のような激しい爆発の中心に浮かぶ天使。近くの人間とファイレクシア人の軍勢は目がくらんでいる」

 《黎明をもたらす者レイヤ/Reya Dawnbringer(IN)》は、他のものよりもよく特徴を表している作品であるために絵が取り替えられた典型的なケースである。

「この絵は《眩しい光/Blinding Light(IN)》っていうやつのために描いたんだけど、R&Dの人たちが僕が描いた天使がこのカードをもっといいレイヤになると考えて、交換されたんだ。でもね、カラー・ガイドラインはカードのどれにおいてもだいたい同じなんだ。そ、白のカード解説はぜんぶ。

例を挙げると、セットを通じて一貫したカラー・テーマを作るために、同じパレットがそこに示されるんだ。正直なとこ、僕自身や大部分の他のアーティストたちも、そういった説明をちょっと無視して描きたいような感じで描いていくんだ。レイヤの絵を描くにあたって、絵を見たときに、その天使の輝きに包まれるような感じの暖かなものが欲しかったんだ。彼女は金属鎧を身につけているともあったから、金属の色調も入れた。出来上がったものは色指定を含めた選択を意識したものではなかったし、絵として自然に感じるものではなかったんだ」


 インベイジョンの象徴だけでなくマジック全体にとって、レイヤの絵がこうなったことは明らかにこの交換が成功を収めたということである。

 実際に絵を描く段にある限りでは、マット氏は天使に確実に焦点を向けるためにちょっとしたトリックを使った。そして作品はさらなるステップを踏むために多少編集されもしたのである。

「本来のアート解説は、他のすべてのクリーチャーたちを追い払う眩しい光を作り出す天使ということだった。[完全版の]作品には2体のクリーチャーがいるのが大きな特徴だね。ひとつはメタスランでもう一方はある種類のファイレクシアの戦士。でも、カードにするために可能な限り多くそれらが天使にかかる部分を取り去ったんだ。かなりの部分をね。

天使の姿を不明瞭にしたくなかったから、それについてはストレートに人々が見たいと思うものを出したんだ。カードがすることを誰が気にするんだい? 綺麗な天使が見たいとは思わないかい? でなきゃ君らが手にする他のカードぜんぶでクリーチャーの群ればっかり見たいかい? だから、お邪魔は可能な限りはじっこに追いやって、中央の絵に最大限出てこないようにしたんだ。もとの絵は縦長の形式で描かれていて、脚と羽根がもっと見えるんだよ」




 《要塞の暗殺者/Stronghold Assassin(SH)》
 《要塞の暗殺者/Stronghold Assassin(SH)》の機能はそのコントローラーがクリーチャーを生贄に捧げることで別のクリーチャーを破壊するというものである。暗殺者の能力を起動するためにクリーチャーからエネルギーを吸い取るというアイデアは、この作品で克明に表されている。「[アート解説]は実際のシーンよりもカードの機能が書かれてて……暗殺者がでかい皮下注射器みたいな針を持ってて、そいつで君を刺すっていう。それで生命力を吸い取って自分自身に送り込むんだ。そのホース役が彼の頭にあるすべてのことだね」

 しかし、マット氏が描いたカードの絵はそれとはかけ離れているのだが?《要塞の暗殺者/Stronghold Assassin(SH)》は確かに、マジックのカードを今までに飾る多くの写実的なイメージ群のひとつである。

「僕は可能なときにはいつもそれを隠そうと努力してるんだ。僕の仕事が正しければ、僕のアートワークに感情的な反応が返ってきてくれることを願うけど。作品が怖さや恐ろしさを訴えかけるのなら、僕はそうなるよう持っていこうとする。でも、根拠なくそうすることのないようにもしてるんだ。

この絵にはちょっと血が描かれてるけど内蔵の房とかがぶらさがってるわけじゃない。それは単に作品を構成する方法であり、その闇の仕事を楽しんでいることが明確な暗殺者との対照でしかない。被害にあった兵士は暗殺者の仕事を絶対に楽しんでいない、とすべては'あんた、被害者が俺じゃなかったことが俺は嬉しいよ'と思わせるための仕事なんだ。この理由は二重にあって、以前のマジックでお馴染みになっていたことよりもテンペストではさらに勇気を入れこもうとしていたんだ。僕らはみんなの見解に異議を唱え、ちょこっと目を開けてくれ、これはその父親のファンタジーじゃないんだってことを言いたかったんだ。二つ目は可能な限り機能のコンセプトと絵を近づけたかった。そこで暗殺者がそうやってるいることを示す必要があったんだ」


 そういえば、暗殺者の不幸な犠牲者のモデルは誰だったのだろう?

「あんまり自画像は描かないんだけどね… 人生のうちでも2回か3回だよ、たぶん。この目を飛び出されている兵士は−−−あー、頭を剃った僕なんだ」

 カードの絵を作り上げるものの部分で際立っているのは、暗殺者が使っている武器が非常に特異なことである。

「これは全部デザインだけでね。期待に反したクールな見栄えのする暗殺者の武器が欲しかったんだ。そりゃ身の毛もよだつような短剣を持たせてやれば簡単なことさ。だけどそれだとすでに描かれてるようなたくさんの暗殺者と似たり寄ったりになっちゃう。これは、ワイルドに異なった何かをする機会だった。だからこれで行ったのさ。この武器は痛そうだし、チューブは汚らわしいし。僕は君が絶対に経験したくないような死を見せたかったんだ。ちょっとのアレで感受性を乱せればなぁってね」

 これが提出されても、ウィザーズ社の上司の誰も、不快にはならなかった。実際のところ、このスタイルのたぐいはストロングホールドにと推奨された。マット氏はその時点で存在した二重のスタンダードを素早く指摘していたのだ。

「僕らはこのセットで'余分に行き過ぎちゃった'仕事を与えられていた。できるかぎりのことを駆り立てられていたんだ。おかしかったのは、誰も絵に対して否定的でなかったってことだね。彼らが却下したのは'《復讐する天使/Avenging Angel(TE)》'だったんだ。アートワークを承認(検閲)する責任がある人たちは、過度にセクシーであったりエッチっぽいものに対して、乱暴であるものや恐ろしいものよりはるかに多く口を出してくるんだ。

《復讐する天使/Avenging Angel(TE)》の絵のオリジナルは、白い'ブリーフ'をつけてたんだ。あの人たちは'パンティー'と呼ぶのが好きだったみたいだけどね。で、ティーンのお子様たちにとっても有害であると決めつけて、着ている服の残りの部分に合うようにデジタルで彩色しなおしてしまったんだ。なあ、ワンダー・ウーマンはパンティーかブリーフをはいてるかい? バットマンのはありゃパンティーか? ピチッとしたあの白いのじゃないんだからいいじゃないか。僕らの手で若い世代全員をひっくり返すとでも? 僕としてはちょっとの苦情くらいかゆいもんだと思ってるよ。でも、この二つの間にささいな違いかなにかがあるのかな?どうなの? 《要塞の暗殺者/Stronghold Assassin(SH)》:問題なし。《復讐する天使/Avenging Angel(TE)》:大好きな神様!彼女は白のパンティーを着けてるよう!」

 [編集者注:マジックのクリエイティブ・ディレクターであるブレイディー・ドマーマス氏によれば、"セクシー"であることは、女性が具体化されることなく、否定的な固定観念が強く出ない限りは何も問題ないということである。言い換えるならば、"悩ましいおねえちゃんは禁止"、だ。]



 《ウルザの激怒/Urza's Rage(IN)》
 アート解説:「場所:コイロスの戦場。ウルザは自分のタイタン・スーツに乗り、大規模な破壊的火力呪文を唱える。ウルザは組み合わされた連合シンボルを持っている」

 この作品の興味深い点は、ウルザ自身がどこにも見えないことである。「うん、彼はほとんどはっきりとは見えてないよね。カードの絵窓は1インチ半しかなくて、そこにバトルスーツ全部を入れたかったんだ。2ミリくらいしかない透けたガラス窓の向こうにちょっとしかウルザが見えないけど。2ミリの幅しかないのに誰かの顔を描いたことあるかい?」

 もう一つ注目すべきチャレンジは、アート解説によって示されている、マジックのファンタジー的領域における機械的な、技術的な要素を含むアイデアである。スタイルを崩すことを避けながら、2つをどのように一つに合わせていくのだろう?

「もし君がファンタジーに機械を取り入れるつもりなら、それがファンタジーで存在するように見せなければならない。でもね、マジックはD&Dみたいにきっちりした伝統的なファンタジーであろうとはしてないんだ。最初っから多くの機会を得てきたけど、常に別のものや、個性的なものにしようとひと押ししてきたからなんだ」

 例えば、火はスーツから出ているけれどもそれが出始めている特定の所はない。そのかわりに、ウルザの周りを包み、その目標物に向かって発射されている。「これはサイエンスフィクションよりファンタジックにしようという試みの一部さ。火は武器から発射された弾薬じゃなく、呪文の効果ということになっているから。これを示すために、機械の装置から放出されるかわりに彼のまわりに呪文が現実化したように見せたかったんだ。頭の上にある'銃'は、実はウルザが呪文を唱える補助をする魔術調律用フォークかなにかだったというわけ」

 マット氏は、「僕よりもっとスマートでかわいい」は奥さんのシェリー、「スマートじゃないけど、キュートな」愛犬アーガス、「一緒にいる誰よりスマートだけど、移り気なのは変わらない」愛猫トーンセスたちと一緒にシアトルに住んでいる。マジックの領域以外の仕事が関係している限り、マット氏はまったくもって立派な履歴を持っている。

「僕はアート監修ができるし、デザイン補助もできる。最初の絵描きの仕事−−−レジェンド・オブ・ザ・ファイブリングズではたくさん絵を描いてる。バトルテック、ヴァンパイア、ネットランナーといったウィザーズ社のコレクションカードゲームでも働いてる。ダンジョンズ&ドラゴンズのやつでもけっこう描いてるし、今はもうないけどFASAでイラストレーターとして2年働いてる。シャドウラン、アースドーン、悲運のヴォール:メイルシュトロームとかの生産ラインのすべてで働いたんだ。

少し前はときどきホワイトウルフの出版物や、その他のカードゲーム、雑誌のカバーイラストを描いたりするよ。あとビデオゲームの仕事を2つくらいやったかな。最近はもっと個人的な本でたくさん仕事をしてたし、d20製品の出版社やミニチュアゲームで仕事をしたりしたよ。日常で面白かった仕事のうちに入る、魔女の火っていうタイトルの三部作シリーズもののカバーの連作を、去年描き終えたところさ」


 マットとはジェネコンで会うことができる。そして彼はサンディエゴのコミック・コンにも顔を出している。彼のウェブサイト、http://mattwilsonart.comの最新更新で彼の動向をチェックできるし、そこでプルーフ、プリント、原画を買うこともできる。


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Matthew Wilson Card Gallery

Matthew D. Wilson
Matthew Wilson

第7版
 《遍歴の騎士/Knight Errant(7E)》
 《セラの代言者/Serra Advocate(7E)》

オンスロートブロック
 《クローサの拳カマール/Kamahl, Fist of Krosa(ON)》
 《平和な心/Pacifism(ON)》
 《不快な助祭/Vile Deacon(LGN)》

オデッセイブロック
 《限界点/Breaking Point(JU)》
 《仮面のゴルゴン/Masked Gorgon(JU)》
 《銀の熾天使/Silver Seraph(JU)》

インベイジョンブロック
 《黒曜石の見習い僧/Obsidian Acolyte(IN)》
 《黎明をもたらす者レイヤ/Reya Dawnbringer(IN)》
 《魂の織り手/Spirit Weaver(IN)》
 《ウルザの激怒/Urza's Rage(IN)》
 《洗い流し/Wash Out(IN)》

マスクスブロック
 《バリスタ班/Ballista Squad(MM)》
 《沿岸の海賊行為/Coastal Piracy(MM)》
 《岩山トカゲ/Crag Saurian(MM)》
 《クリスの魔道士/Kris Mage(MM)》
 《レイモス教の隊長/Ramosian Captain(MM)》
 《生き返り/Revive(MM)》
 《目くらまし/Daze(NE)》
 《骨なしの凶漢/Spineless Thug(NE)》
 《生皮はぎ/Flay(PR)》
 《獣たちの女帝ジョルレイル/Jolrael, Empress of Beasts(PR)》

ウルザブロック
 《法の信奉者/Disciple of Law(UZ)》
 《セラの伝令/Herald of Serra(UZ)》
 《歴戦の司令官/Seasoned Marshal(UZ)》
 《粛清の大鎌/Purging Scythe(UZ)》
 《テレパシー/Telepathy(UZ)》
 《パリンクロン/Palinchron(UL)》
 《病原菌保菌体/Disease Carriers(UD)》
 《ただれた傷口/Festering Wound(UD)》
 《疫病犬/Plague Dogs(UD)》
 《アカデミーの事務局長レイン/Rayne, Academy Chancellor(UD)》
 《つながれたグリフィン/Tethered Griffin(UD)》
 《不実/Treachery(UD)》
 《ヤヴィマヤの女魔術師/Yavimaya Enchantress(UD)》

テンペストブロック
 《復讐する天使/Avenging Angel(TE)》
 《ダウスィーの傭兵/Dauthi Mercenary(TE)》
 《ケザードリックス/Kezzerdrix(TE)》
 《ファイレクシアの大男/Phyrexian Hulk(TE)》
 《闇の天使セレニア/Selenia, Dark Angel(TE)》
 《スカイシュラウドのトロール/Skyshroud Troll(TE)》
 《サルタリーの槍騎兵/Soltari Lancer(TE)》
 《ドリーム・ホール/Dream Halls(SH)》
 《戦いの熱気/Heat of Battle(SH)》
 《狂暴ネズミ/Rabid Rats(SH)》
 《要塞の暗殺者/Stronghold Assassin(SH)》
 《我慢/Temper(SH)》
 《高みのドラゴン/Exalted Dragon(EX)》
 《心の守り手/Keeper of the Mind(EX)》

ミラージュブロック
 なし

初期セット
 なし

ポータル他
 《Dakmor Sorceress/ダクムーアの女魔術師(P2,ST)》
 《Miss Demeanor(UG)》
 《Sex Appeal(UG)》
 Maraxus(V1)
 Serra(V4)

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c 2002 Wizards of the Coast, Inc., a division of Hasbro, Inc. All rights reserved.
 (この翻訳はよりマジックの理解を深めるための手助けを目的としたものであり、権利者に被害を与える目的ではないことを明言しておきます。)
 (ソース:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/59

 #《クリスの魔道士/Kris Mage(MM)》や《黎明をもたらす者レイヤ/Reya Dawnbringer(IN)》など、独特の曲線を持ったすばらしいおねぇちゃんを描いてくれるマット・D・ウィルソン氏の登場です。《Dakmor Sorceress/ダクムーアの女魔術師(P2,ST)》とか大好きなんですが(笑)
  この方も典型的ファンタジーは嫌いなはずですが、確かに独自の理論による新しいファンタジーを作り出している感じがします。だからこそ、「お気に入り」なイラストが出来上がるんでしょうね。日本のどこかで見たような絵ばかり氾濫していると食傷ぎみになったりしませんか?